漢字の呪縛


                   青山 徹(東京)
 本誌9月号の編集ノートで峰芳隆さんが漢字について疑問を呈しているが、私も同様の考えを持っている。
 私は地元で日本語教室に10年以上関わっている。日本へ結婚などで来た外国人も半年もすれば、日常的な会話はある程度出来るようになる。しかし、漢字が読めないので、新聞、雑誌は読まない。そこで彼らはニュースなどはテレビを見て分かっているが、どうしても知識の偏りが出来てしまう。
 また、日本はインドネシアなどから外国人看護師を呼んで、日本の国家試験を受けさせたが、合格率は今年の場合、1.2%という結果となっている。彼女らはひらがな、カタカナ、漢字を覚え、また縟瘡、仰臥位などという術語も覚える必要がある。
  従来、学校で習う常用漢字は1945字だったが、文化庁は昨年これを2036字に増やした。鬱などの字が増えた。書けなくても読めればよいそうだ。
  ご承知のように、エスペラントの文字は28字、大文字、小文字があるので、56字覚えればよく、
ハングルは40字のみ。日本語はひらがな、カタカナ各75字、漢字2036字、これを小中学校で
9年かけて覚える。日本の生徒が小中学校で書き取りの練習をしている間に、多くの国では
算数、理科などの勉強をしている。
 私は以前に、あるネットコラムにこのことを書いたが、少なからぬ反応があった。
 このたび田中克彦さんが「漢字が日本語をほろぼす」角川SSC新書(882円)という本を著述し
た。彼は専門家なので、同様のことを理路整然と述べている。なお、この本は随所でエスペ
ラントについて触れている。

(La Movado 2011.10月号 N-ro 728より) 
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